スプリントレビューにステークホルダーが来ないとき、案内の出し方より先に変えるもの

スプリントレビューの案内を出しても、参加するのは開発者とプロダクトオーナーだけ。営業や事業側の担当者は毎回欠席で、席が埋まらないまま会が始まります。この状態が続くと、レビューはチーム内の進捗確認と変わらなくなります。

この記事では、来ない理由を「関心がないから」で終わらせずに分類し、出席する理由をどう作るかを扱います。あわせて、それでも来ない場合にどう切り替えるかも扱います。

来ないことで実際に失われるもの

出席率そのものは目的ではありません。

スプリントレビューの目的は、作ったものを見せることではなく、次に何を作るかの判断材料を得ることです。使う人や売る人がいない場では、その判断材料が手に入りません。

その結果として起きるのは、バックログの優先順位が変わらなくなることです。フィードバックが入らないので、最初に決めた順番のまま進みます。数か月経ってから大きな手戻りが発生する形になります。

つまり失われているのは出席者の数ではなく、進む方向を修正する機会です。ここを取り違えると、人を集めること自体が目的になります。

案内の出し方を変えても来ない

最初に試されるのは、案内の改善です。開催日を早めに知らせる、リマインドを送る、上長から声をかけてもらう、といった対応になります。

これらは一時的に効きます。ただ、案内が届いていなかったから来ないのではない場合がほとんどです。予定は把握していて、そのうえで優先度が低いと判断されているのが実態です。

案内を強めると、義理で出席する人が増えることがあります。この状態はむしろ厄介です。発言のない出席者が増え、会は長くなり、それでも判断材料は手に入りません。

変えるべきなのは案内ではなく、その人が出席することで得られるものです。

来ない3つの理由

どれが起きているかで打ち手が変わります。

1. 見ても分からない

画面や機能が単体で示されるだけで、それが自分の仕事にどう関係するのかが分からない状態です。技術的な説明が中心になっている場合も同じです。

このとき欠席は合理的な判断になります。1時間使っても持ち帰るものがないからです。参加者を責めても変わりません。

見分ける目安は、レビューで使われている言葉です。画面の名前やテーブル名で説明が進んでいるなら、この理由に当たります。

2. 意見を言っても反映されない

過去に出した意見が扱われなかった経験がある場合です。「言っても変わらない」と学習していれば、時間を使う理由がありません。

この理由が働いているかどうかは、過去のレビューで出た意見がその後どうなったかを追える状態にあるかで確認できます。追えないなら、おそらくこれが原因の一部です。

3. 決める場だと思われていない

報告を聞く場だと認識されている場合です。報告なら後で資料を読めば足りるので、出席の必要がありません。

この認識は、案内文の書き方や会の進め方から自然に作られます。「今スプリントの成果を報告します」と書けば、報告の場になります。

招待範囲が広すぎる場合も、同じ認識を生みます。関係の薄い人まで一律に招待されていると、自分は聞くだけの立場だと受け取られます。招待する人を絞ると、逆に出席率が上がることがあります。

出席する理由を作る

3つの理由のどれであっても共通して効き、とくに理由3には直接効く方法があります。案内に「今日決めてほしいこと」を1行入れることです。

たとえば次のように書きます。

今回は、申込フォームの入力項目を3つに減らした版をお見せします。この形で進めてよいか、項目を戻すべきかを決めたいです。所要時間は30分です。

これだけで、会の性格が報告から意思決定に変わります。決めることがある会には、決める権限を持つ人が来ます。逆に、決めてほしいことを書けない回は、その人にとって出席する必要がない回です。

決めてほしいことを毎回作れない、という反応が出ることがあります。その場合は、無理に作らないほうが結果は良くなります。作れない回が続くなら、スプリントごとに外部の判断を必要とする作業を積んでいないということです。それはレビューの問題ではなく、バックログの並べ方の問題として扱うほうが早く解決します。

もう1つ注意点があります。決めてほしいことを書くなら、その場で決まった内容を後からくつがえさないでください。一度でも決定が別の場で上書きされると、その会に出る意味がなくなります。

見せる順序を変える

理由1が主なら、見せ方を変えます。機能を作った順に見せるのをやめ、利用者が実際にたどる流れの順に見せます。

途中で未完成の部分があっても構いません。そこは口頭で補いながら、最初から最後まで通して見せます。流れとして見せると、自分の担当業務との関係が分かるようになります。

意見の行き先を見せる

理由2が主なら、前回出た意見をどう扱ったかを冒頭で共有します。採用したもの、採用しなかったもの、その理由を並べます。

採用しなかったものを隠さないことが要点です。全部採用されることより、扱われた形跡が見えることのほうが重要です。扱われていないと感じるから来なくなります。

それでも来ない場合

打ち手を試しても来ないことはあります。そのときは、来ないことを前提に組み替えます。

まず、本当に必要な人が誰かを絞り込むところから始めます。全ステークホルダーが毎回必要なわけではありません。今スプリントの成果に関係する人が1人来れば、判断材料としては足ります。

次に、その1人が出やすい形に合わせます。時間を短くする、その人に関係する部分だけを先に見せて途中退出できるようにする、といった調整です。会の途中で帰ってもらう前提で組むと、出席の心理的な負担が下がります。

それも難しい場合は、レビューの場に来てもらうことを諦め、個別に見せに行く方法があります。理想の形ではありませんが、判断材料が手に入るなら目的は達成できます。形式を守ることと、フィードバックを得ることのどちらを優先するかの問題です。

ただし、個別対応を続けると、関係者間で認識が食い違ったまま進む危険があります。個別に見せた内容と判断は、必ず記録して全員が見える場所に残してください。

役割の面でも注意が要ります。ステークホルダーの要望を代弁するのはプロダクトオーナーの責任です。スクラムマスターが個別訪問まで肩代わりし続けると、POが関係者と話す機会が減り、状況が固定されます。数回は代行し、そのあいだにPOが動ける形を整えるのが現実的な進め方です。

なお、来ないこと自体が常に問題とは限りません。プロダクトの方向がすでに定まっていて、当面は決めることが少ない時期であれば、出席率が下がるのは自然です。その時期にレビューの形式を作り込んでも効果は薄く、判断が必要になった時点で呼べる関係を保っておけば足ります。

明日からの一歩

次のスプリントレビューの案内に、「今日決めてほしいこと」を1行だけ足してください。何も書けないなら、その回に誰かを呼ぶ必要はありません。

そのうえで、前回のレビューで出た意見が今どうなっているかを言えるか確認してください。言えないなら、来ない理由はおそらく2番目です。案内の工夫より先に、そちらから手を付けることになります。